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29歳の年の分、積もり積もった記憶。その記憶が残した傷を抱いて生きている女。そして、それでも希望を捨てない女。
平凡過ぎて、かえってそれが特別に感じる彼女の日常の物語。映画「女、ジョンへ」はタイトルからもわかるように、ジョンへという女の物語です。
主人公は、誰かに自分のことを女としてではなく、ジョンへという人間として見てほしいと思っています。それは誰かに愛されたいという彼女の気持ちの現われでもあります。
暑い夏の昼間のように退屈な日常を送っている彼女。今日もいつもの平凡な彼女の一日が始まります。彼女の無表情は29年の間にできた傷の現われです。
そんなジョンへの傷は映画のあちこちで回想シーンとして出てきます。片手にタバコ、もう一つの手で絵を描いていた母の姿。そして母の死…15歳の夏のある昼間に突然襲われた体の痛み…精神科での治療…それらが彼女にとっての幼い頃のつらい記憶です。
ジョンへはそんな記憶に埋もれ、自身を失ったまま無表情で日々を送っています。 しかし、誰よりもそんな記憶から逃れたいと思うのも彼女自身です。
そんなある日、彼女にも愛の風が吹いてきます。自分の名前を暖かい声で呼んでくれる誰かが現れます。暖かい春風のように彼女にやってきた愛。
この映画は感性を刺激する音楽も、長い台詞もありません。そして、主人公、ジョンへ以外の誰にも名前はありません。
「女、ジョンへ」はドラマチックな内容の展開も、涙を誘うような感動もありません。しかし、この映画を見ている人たちは映画の中の日常に平凡な彼女の日常が、観衆自身の日常に似ていると思うようになります。
最初、この映画は10年以上ブラウン管でしか見ることができなかった、キム・ジスの初出演映画だということで注目を浴びました。彼女は今回の映画を通じ、素晴らしい演技を見せてくれました。そして、2004年釜山国際映画祭やベルリン映画祭で賞を受賞するなど、数々の映画祭に招かれています。
この映画は、作品性や俳優の演技力が最高だという評価を得て、多くの人たちの関心を集めています。
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